2023観劇記録

夏に書き始めた記事をようやく更新する遅筆っぷりよ。仕事が忙しくて癒しを求めた結果、この夏は観劇三昧でした。チケット代を計算するのが怖い。

 

宝塚歌劇団

(備考がないものはすべて東京宝塚劇場公演)

星組公演 『ディミトリ~曙光に散る、紫の花~』『JAGUAR BEAT-ジャガービート-』(新人公演も観劇)

雪組公演『海辺のストルーエンセ』

花組公演『うたかたの恋』『ENCHANTEMENT(アンシャントマン) -華麗なる香水(パルファン)-』(配信)

星組公演 『バレンシアの熱い花』『パッション・ダムール・アゲイン!』 (市川文化会館)

月組公演 『応天の門』『Deep Sea -海神たちのカルナバル-』 

宙組公演 『カジノ・ロワイヤル ~我が名はボンド~』

雪組公演 『Lilac(ライラック)の夢路』『ジュエル・ド・パリ!!』

宙組公演 『大逆転裁判』(KAAT公演)

星組公演 『1789 -バスティーユの恋人たち-』

雪組公演 『愛するには短すぎる』『ジュエル・ド・パリ!!』(全国ツアー公演@神奈川)

雪組公演 『双曲線上のカルテ』(配信)

花組公演 『鴛鴦歌合戦(おしどりうたがっせん)』『GRAND MIRAGE!』 

月組公演 『フリューゲル -君がくれた翼-』『万華鏡百景色(ばんかきょうひゃくげしき)』 

花組公演 『BE SHINING!!』(昭和女子大学人見記念講堂

雪組公演 『ボイルド・ドイル・オンザ・トイル・トレイル』『FROZEN HOLIDAY(フローズン・ホリデイ)』(宝塚大劇場公演)

 

下記公演はチケットは取れていたものの公演中止のため観劇できず

宙組公演 『PAGAD(パガド)』『Sky Fantasy!』

 

宝塚以外

ミュージカル『ファントム』(東京国際フォーラム公演)

 

以下感想はスマホからメモを発掘できたものを載せておきます。観劇直後に書きなぐったものが多いので文法ぐちゃぐちゃなものも多いけどその時の衝動を残しておく……。

星組ディミトリ新人公演@東京

いい舞台を見た。舞台に立つ喜び、演じられる幸せが溢れた時間でした。技術的には荒削りだし、本公演には敵わない部分はもちろんあるんだけど、全身全霊で与えられた役に挑み、ぴかぴかキラキラと光るスターの輝きに胸がいっぱいになってしまった、
天飛くんが別格でした。新人公演卒業の時にこの目で見られてよかった。ディミトリとして生きていた。ふとした瞬間にああこれはきっと本役の礼さんから学んだのだろうな……と感じることが幾度もあり、天飛くんにとって礼さんが偉大な存在なのだろうなと思いました(終演後挨拶でも恐らく上手側にいた礼さんの方を向いてご挨拶されていましたね)。本当なら本公演→新人公演の順で観劇する予定が、公演中止のため新公を先に見ることになり、本役さんとの比較ができなかったのが惜しまれます。きっと礼さんから学んだことが沢山あると思うので…………。リラの木の下でルスダンを後ろから抱きしめる姿に包容力と深みを感じて、素敵な男役さんになられたなぁとしみじみ…………そしてこれからより美しく素晴らしい男役さんになられることでしょう。いつの日かセンターに立つ天飛くんを見るのが楽しみです。

 

雪組海辺のストルーエンセ

(ストルーエンセは現地観劇の前にライブ配信を見たのでその時書き殴ったコメントもあるけれど、あれは文章というよりTwitterに投稿するような短文と単語ばかりだったので、ここにはKAATで実際観劇した時のメモに少し補足したものを載せておく)

ヨハンにとってのフォレルスケッタは木琴の音なのか 突然のキスをしたあの瞬間抱いた感情 それを指田先生は描きたかったのかな
微笑むでも泣くでもなく、胸の中にあるのは困惑と微かな喜びか えもいわれぬ何か それこそがフォレルスケッタ

(Forelsket:カタカナで書くならフォレルスケッタ、またはフォレルスケットなど。意味は『誰かを好きになった時に感じるとても幸せなあの感じ』、『恋に落ちた時に感じる、言葉にできない程の幸福感』、『語れないほど幸福な恋におちている』など)

仮面舞踏会から金箔付き衣装に変わる 国を変えたい政権を取りたい王になりたい野望と欲望が表に出てきてしまった
逆にカロリーネは男装で何の汚れもない姿を見せる(その後情欲を知ってしまい、ピンクのドレスでは金箔付きになるわけですが、あの姿が一番王妃らしい格好で欲に塗れた王宮には似つかわしくあった)

ストルーエンセが男女問わず籠絡しても何も言われないし、王妃が男装しても否定されない(これは史実でカロリーネが男のような格好をしていたのも影響していそう)このあたりは令和

 

雪組ライパリ

鉄道と近代化というテーマ的に多分小林一三先生の生誕150年記念作品として作られたのだと思う。がしかし色々引っかかるところが多くてお芝居がちょっと理解しづらかったけど振付は流石謝先生、美しかった。「鉄の時代」の彩風・朝美・和希の三重奏は見事なハモリでよかった。この三人だと朝美・和希どちらが下パートを担っているのか、気になって確認した気がするけど忘れてしまった(二人とも低音がよく出るので)。エリーゼの扱いから新しい時代を生きる女性を描きたかった……と思われるのになんだかナチュラルに昭和の気配を感じてしまった。職業音楽家になりたかったはずなのにあの流れでアクセサリー作りに転身するのは納得はできなかった。そしてフランツ、自分の兄弟の殺害を企てた女性と結婚しようと思うか普通!?あの脚本でディートリンデを憎まれ役にせず描き出せたのはひとえに野々花ひまりさんのお力かと……。ライラックの扱いもなんかなぁ。先日星組ディミトリでリラの花が効果的に使われているのを見た後だとライラックがあまり印象に残らなかった。演者の力技でなんとかしている脚本だった、というのが個人的評価。でも彩風さんの兄弟たちをガンガンぐいぐい引っ張っていく兄っぷり、夢白ちゃんエリーゼの陽の気をまとった闊達な女性像、朝美フランツの生硬さとディートリンデとの駆け引き、軍服姿が凛々しい和希ゲオルグ、四男坊という設定に深みを与える明るさと的確な芝居で場面を正確に運ぶ一禾ランドルフ、病弱だが音楽の才能に恵まれ周囲に愛される華世ヨーゼフ、5人兄弟が生き生きとしていたのでそこは美しい兄弟愛だった。縣アントンもお芝居が上手くなったなぁ……。

併演は大介先生のレビュー。熱いショーも優美なレビューも両方書けるのが大介先生のいいところだなと思います。夢白ちゃんのトップ娘役お披露目公演でしたが、彼女の歌が以前よりずっと上手になっていて驚きました。誕生石の歌い継ぎは実に華やか。雪組公演初のSS席で観劇することができたのですが、オペラ要らずの視界にテンション上がりすぎて記憶が定かではありません。誰もかれもきらっきらしてた。

 

宙組大逆転裁判

まず感想以前の話として、KAAT公演は東京宝塚劇場公演と同じ15時半だと思い込んでいたので15時開演だと電車の中で気が付き、駅からガチダッシュする羽目になりました。開演1分前に客席入口に辿り着き、係員さんに「席ご案内しますか?」と聞かれて即はい!と答え、案内していただいた座席についたら即開演でした。もう二度と間違えないように気をつけます…………。

お芝居はゲームの世界が見事に再現されていて、原作を遊んだことがない人でも楽しめる仕様だったのがよかった!特に中心メンバーが歌上手で、脚本もコミカルにテンポよく動くので笑いながらも話を追えて面白かったです。瑠風成歩堂が歌いながら1階客席の中程まで来るシーンがあり、これがとんでもなく格好良かった。額に大汗かいて熱演しているのが近くで見えると胸が高鳴る。あの学ラン、ゲーム仕様にデフォルメされて襟がとても高いのに首回りに余裕があってタカラジェンヌの首の長さじゃないと着こなせない衣装でした。瑠風成歩堂は地毛っぽく見える黒髪でしたが、ウィッグだったのか本当に地毛なのか分からなかった。山吹ひばりさんはもうはまり役でしたね。お声とキャラクターがよく合ってた。鷹翔さんのシャーロックホームズもほんといいキャラしてるわ~~って思わせる力がありました。最後の成歩堂君と寿沙都さんのやり取りが甘酸っぱくて!!!もだもだがたまらない!!!これを見ただけでチケット代を払う価値がある!

汝鳥さんのメニクソン、小春乃ヴィクトリア女王ががっちりと舞台を引き締めていた印象。お歌のとっても上手なヴィクトリア女王でしたが衣装の時代がずれてたのはあれでいいのか。バンジークスのかかと落としは優希さんにしかできない表現でした(ダンスだけでなくお芝居でも活躍されていたのでこれからが楽しみだなー!と思っていたのに次の本公演での退団発表があり涙しました)そして天彩さんのニーナ・ジョーンズは絶対何か隠してそうだなと思いましたが、流石は期待を裏切らない。どのキャラクターも原作を尊重しつつ生き生きと描かれていたと思います。

 

星組1789

いやーーーーーーーーーーーーーーーものっそいチケ難公演でした。友の会が何とか確保してくれたB席と、一般販売でえいやと取った立見1枚が限界でした。B席でも劇場で見られただけ有難い。月組版は見たことがないので初めての1789でしたが、名曲揃いで終演後も曲が頭の中でリフレインしていた。今回は農民ロナンと、貴族階級に属するオランプの身分違いの愛が押し出された構成・演出……だったように思う。トップコンビの愛が中心になって構成されていたので、逆に月組版でトップコンビがロナンとマリー・アントワネットを演じた際はどういう構成・演出だったのか気になる。礼ロナンはボディパーカッションや民衆たちの熱、どれも星組の熱さが活きた作品だった。今回が退団公演となった有沙さんのマリー・アントワネットは有終の美を飾るにふさわしい素晴らしさでした。第1幕の少女のような王妃様が、第2幕でフランス王妃としての務めに目覚め、気高さをまとうのはあの時の彼女だからできた表現のように思えた。海外ミュージカルあるあるで役数は限られていたものの、通しの役名がない演者も全員、一人一人が1789の世界を生きていた。

で、ですね、えいやっと掴み取った立見がまさかなんと代役公演初日になってしまった。その時の感想はTwitter(X)に書いたのでここでは詳しく書きませんが、代役というのは最初から最後まで全てを代演できるようにするのだと、今日、宝塚を初めて観劇する人でも楽しめるように勤め上げるものなのだと感じました。正直すごいものを見てしまった感がある。

 

雪組愛するには短すぎる/ジュエル・ド・パリ

久しぶりの全国ツアー公演。神奈川県民ホール公演がチケット取れたので行ってきました。愛短は4度目の再演というもの納得の脚本。正塚先生すごい。笑う気がなくても思わず笑っちゃうんですよ。りんきらさんのオサリバン執事が何か言うたびに客席からくすくす笑いが漏れる絶妙な掛け合いと間。どの場面も台詞も珠玉。さきあさのコンビネーションがよかったので「恋は元々アンフェア」の掛け合いはもう一度聞きたい。あんふぇーーーーーーーーーーーー♪は名曲。この二人の並びももうすっかり見慣れたものですね。

ジュエル・ド・パリは本公演からの継続なので基本形は変わらず、全国ツアー公演用にカスタマイズされた差異を見つけるのも楽しかった。そして本公演では楽しく見ていた場面なのに、全国ツアー版の客席降りで泣いてしまった。泣く場面じゃない、むしろジェンヌさんが近くまで来てくれて嬉しくて、きゃー!ってなる場面のはずなのに、まっすぐに1階後方を目指して走っていく列を見たら涙が出て仕方がなかった。数年ぶりに見る客席降りは刺激が強かったのか?コロナ禍で色々なことが制限されたけど、公演再開しても客席降り復活はまだまだ先のことだと思っている節があったからだろうか。Twitter(X)で各地の公演レポ追ってみたところ、日替わりの掛け声やご挨拶でも各地の名物や美味しいものに触れているようで、タカラジェンヌも全国ツアー公演を楽しんでいるのが伝わってくるのが本当に嬉しい。緊急事態宣言が出て公演中止になった日、公演再開してもタカラジェンヌは劇場と自宅の往復しかできなかった時期は少しずつ終わろうとしているのを客席降りという演出に感じたのかもしれない。(実際にはコロナ感染者数が爆増していてとても気が抜ける状態ではないですが)

 

雪組双曲線上のカルテ

こちらは配信のみ。

和希そらにダメな男を演じさせたら天下一品。その終わり方はどうなのよ!?モニカのことどうするの!?と思ったけれど、フェルナンド的には考え抜いた末の決断なのだろう。終盤フェルナンドが湖に沈んでいく動き……あれはコンテンポラリーダンスになるのかな、あの場面の演出が素晴らしかった。樫畑先生ありがとうございます。この後まさか退団発表があるとは思いませんでしたよおおおおお。

 

月組公演フリューゲル/万華鏡百景色

まずはお芝居、ルイスの自己紹介ソングでガンッガン客席を釣りまくるおだちん、最高 もともとはお芝居で才覚を現した人ですけど、ショースターとしても輝けるようになった…………〇〇〇〇!〇〇〇〇!!(ネタバレなので伏せておく)と自己紹介してるのすら格好いいとか嘘だろう〜〜〜ここでジャケットとベストの隙間から白いシャツがちらりと見えるのが男役の絶対領域感あって最高

今回は風間さんと彩海せらさんの男役度上がりっぷりに目が離せなかったんですが、ふとその前に目を向けると男役の色香を振り撒く月城&鳳月のワンツーがいて、このセクシーさは新公卒業したてや研10じゃ出せないわ……と感服する

『万華鏡百景色』ガス灯夫の半被に丸い金色の装飾が散らされており、これが照明を受けるとキラキラしてガス灯の明るさを体感しているような気持ちになる。

舞踏会、芥川龍之介ですね 私は芥川龍之介の『蜜柑』に思い出があるので芥川作品が使われていると嬉しくなる 原作準拠の展開がまたぴったりで栗田先生の題材の選び方が憎い 令嬢方のドレスも男役の黒燕尾もこういう煌びやかさはなんぼあってもええもんですからね、そして堂々登場の月城さん白軍服の美しいこと!月城さんはノーブルでグレースな軍服とか燕尾とかフォーマルな服装がバチっと決まりますよねぇ。後年の電車でのやり取りにて彼が『お菊夫人』の作者であることが明かされることから、白いドレスで踊る6人口の娘役は菊の象徴か ここの在りし日の思い出を懐かしむさちかさんと快活な文学青年の彩海さんのやり取りがまたいい。ショーでも芝居の月組は魅せてくれる。

ロケット前にある娘役群舞のさちかさん、上級生の品格ある美しさと娘役の可憐さは両立する。娘役群舞は薄暗い中を大階段の上から下から娘役が整列するところから綺麗 踊りはじめると白黒赤の領域が鮮やかに移り変わるのが実に、実にいい……大階段にスカートの赤がパッと広がるのが美しいんです これは2階席でフォーメーションごと楽しみたい演出

男役!群舞!大階段の上から隊列組んでザッザッと降りて来るのは定番だけどこの動きにしか出せない圧があって観る側も気合が入る その真ん中を一人降りてくる支配者に誰もが首を垂れる 娘役も2番手も皆トップスターの位置する場所へ手を伸ばす 組のトップはこの人だと示す一瞬が群舞の醍醐味かも知れない

 

ミュージカル『ファントム』

真彩ちゃんクリスティーヌ見たさにチケットを取りました。もしかしたら真彩クリスティーヌを見る最後の機会になるかもしれないと直感していたので(実際大千穐楽でそのような発言があったそうなのでそれは当たっていた訳ですが)。

宝塚に慣れていると今回のS席14,000円には正直チケット代高ッ!宝塚のSS席より高い!?と思ってひるんでしまいますが、しかし、それだけの価値がある素晴らしい舞台だった……。メインキャストからアンサンブル、子役まで全員上手い。芝居も歌もダンスもどれも凄い。上手過ぎてぽかーーーーんとなるしかない。宝塚は音楽学校出たての雛鳥からスターになるまでの成長も含めて見守り楽しむ文化(だと思っている)なので、そもそもの前提が違うなーと思いました。あとダブルキャスト前提、週あたりの公演数も宝塚より少ないので精神的・身体的負担が全然違うのはいいなあと思った。スター制度が前提の宝塚ではどうしてもシングルキャスト前提になってしまうので……。私にしては珍しく複数回観た作品ですが、リピートすると前回と全然違う印象を受けびっくりしました。ファントムの解釈、細部の台詞、わずかな違いなのに作品全体の雰囲気がぐっと変わってくるのは複数回観たからこその発見で面白かったです。とはいえぶっちゃけとんでもないチケット運を発揮して良席で見られたからこその発見ではある。国フォCホール1階1列とかもう見られる気がしないぞ。でも2階で観た時はオーケストラまで上下左右全体が見渡せてストーリー把握は一番しやすかったし、階段のぼって歌うシーンは1階で見るよりキャストが見やすくてどの席にも良さはあった。1階前方列だとかなーり見上げる体制にならないとキャストが見えなくなっちゃうので首が痛かった、が贅沢な痛みであった。

今回の『ファントム』のエリックは子供がそのまま大きくなってしまったファントム。だから正論言われて言い返せないとあ゛ーーーーーーーーッ!!!!!(大声地団駄)しかできない
エリックの世界はオペラ座の地下だけ、会話するのはジェラルドだけ、知ってる人はままとジェラルドと浮浪者達だけ 狭くて寂しい世界

キャリエールの回想に乗せて踊るベラドーヴァすごく好き 真彩ちゃんの地に足がついた踊りが宝塚時代から好きなので……手や腕は優雅に、しかし踏み締める足は力強く踊りながら目はギラギラしているのがすっごく好き…………

この『ファントム』ではクリスティーヌはエリックのことをほぼ「先生」と呼んでいて、「エリック」と呼ぶのはエリック(ファントム)が追い込まれて警察に囲まれている場面くらい?クリスティーヌにとってエリックは最後まで音楽の先生であって、恋する相手ではなかったのかな おでこにキスするのも敬愛と慈愛に思えた
というか、宝塚版が宝塚故にトップコンビが演じるエリックとクリスティーヌに恋愛要素を足しているだけで、本来の『ファントム』はシャンドン伯爵とクリスティーヌがいい関係になるのが正なのか……?

 

どの作品も楽しかったなぁ……と思いつつ年越しの準備をします。よいお年をお迎えください。