2021年宝塚観劇総括

2021年 観劇した宝塚作品(配信含む)

花組『NICE WORK IF YOU CAN GET IT』(配信)

宙組『アナスタシア』

月組『ダル・レークの恋』(配信)

雪組『f f f -フォルティッシッシモ-』~歓喜に歌え!~『シルクロード~盗賊と宝石~』

宙組『夢千鳥』(配信)

星組ロミオとジュリエット

雪組『ほんものの魔法使』

花組アウグストゥス-尊厳ある者-』『Cool Beast!!』

星組『マノン』

月組『桜嵐記(おうらんき)』『Dream Chaser』

花組『銀ちゃんの恋』~銀ちゃん、本日も反省の色なし~-つかこうへい作「蒲田行進曲」より-

花組『哀しみのコルドバ』『Cool Beast!!』(配信)

宙組シャーロック・ホームズ-The Game Is Afoot!-』~サー・アーサー・コナン・ドイルの著したキャラクターに拠る~『Délicieux(デリシュー)!-甘美なる巴里-』

月組『LOVE AND ALL THAT JAZZ』…ベルリンの冬、モントリオールの春…(配信)

雪組CITY HUNTER』-盗まれたXYZ-『Fire Fever!』(本公演は劇場で観劇、新人公演は配信視聴)

星組柳生忍法帖』『モアー・ダンディズム!』

 

大劇場公演は最低1回以上現地で見られたので嬉しい。去年はコロナで星組眩耀の谷のチケットが全部吹っ飛ぶという悲しい思いをしたので、劇場で観られる幸せを嚙み締めた一年だったように思います。配信のおかげで別箱公演もかなり見られました。新人公演もおうちで見られるなんて思ってもいなかった……ありがとうございます。どうしても都合がつかなくて見られなかった公演もあるのでそれらもいつか見られたらいいな。宙組プロミセスプロミセスだけはどうやっても見られなさそうなのが惜しいところではあります……海外µの宿命とはいえ、配信なし・スカステ放送なし・円盤化なしとなると、後から興味を持ってもハードル爆上がりで難しい。チケットが取れれば見たかった。がしかし友の会はお友達になってくれなかった。

一番通ったのは雪組シティーハンター。サイトー先生の脚本演出に色々思うところはあったものの、公演期間に自分の誕生日があったので誕生日祝いだと理由をつけて回数増やしました(だって絶対あーさの誕生日アドリブが入ると思ったのでどうしても見たくて……)。男性キャラクター、特に冴羽獠のセクハラ行為にはげっとなる部分もあるのですが、私の場合は原作読んでないのと、90年代生まれで作品の時代を知らず、「令和の演出としてはアウトだけどサイトー先生は原作愛が強すぎてとにかく原作を忠実に再現したんだろうな……?」と思うことでなんとか見られた気がします。作品自体は面白かったし、要素を詰め込んだために展開が早かったので、セクハラ描写に疑問を抱いてもすぐ次の場面に切り替わってよく考える時間がなかったので誤魔化された気がする。というか原作を尊重するのは大切だけれど令和に上演するならもっといい演出は絶対にあったと思う。しかし時代に合わせたブラッシュアップが正直一番期待できないのがサイトー先生なのか、という諦念もちょっとある(今年の公演ではないけど恋スルARENAとかNOW! ZOOM ME!!の演出もちょっとねえええ)。

自分比で一番チケットが取れなかった大劇場公演は宙組ホムシュー。東宝組なのもあるけれどびっくりするくらい取れなかった。ムラでの評判が良かったので西の方も追いチケ遠征したのかな?と思いました。実際見たらホームズは生田先生の原作への崇拝が活かされていたし、デリシューは中毒性があって本当にチケットがあるなら追加してもっと見たかった……!宝塚には夢を見に行くわけですが、圧倒的な美しい夢を見せてくれる45分間でした。パステルカラーの夢に包まれる喜びよ。あの夢の空間が期間限定で二度と再演されないものであることがつくづく惜しい。

別箱公演は神奈川KAAT公演が多かったので天井席だけど観劇できたものが幾つか。あーさの『ほんものの魔法使』が一番印象深い(初めてKAATで観劇したというのもある)3階席の手すりに視界を阻まれながら必死にオペラグラスで演者の顔を追っていました。噂のブリリアよりはずっといいのだろうけど、KAATも手すりの高さが結構厳しい。

 

以下各公演の簡単な感想。ざっくりと!

花組ナイワ:ほんっとヘタレなダメ男を演じさせるとれいちゃんは天才ですね(もちろん褒め言葉として)。いくら顔が良くても結婚離婚繰り返すマザコン男なんて現実に居たら論外of論外ですが、舞台の上でれいちゃんが演じるとそれすら愛らしく見えてしまうから素晴らしい。あきらクッキーも素敵だった。くまちゃん背負う二番手スター。音くりちゃんジェニーと飛龍くんドゥークのコンビも大好き。音くりちゃんはどんなお役でも素敵ですね。冒頭で出てきたときに普段の可愛らしい音くりちゃんとは全然印象が違ったので一瞬誰かと思いました。それだけ役作りに長けた人なのだなと思います。個人的には一番素敵な華ちゃんが見られた公演でした。

宙組アナスタシア:ディミトリとアーニャが幸せであらんことを。ウラドおじちゃんとリリーの駆け引きに注目してた気がします。海外µの宿命というべきか、お役が少ないのが惜しい。割と大千穐楽近くに見たのですが、まどちが通常以上にめちゃめちゃ早口でどうした?と思ったのを妙に覚えています。ロマノフ王朝時代のドレスが煌びやかでした。寒い地域のドレスなのでドレスもケープのような腕を覆うデザインになっているのかな。じゅりちゃん少女アナスタシアの可愛さよ。男役群舞のロシア風赤黒衣装と振付が格好良かった(上衣はルパシカ風?ルパシカでいいのか自信がなくなったのでロシア風、としておく)。

月組ダルレーク:これまで見られなかった別箱公演がおうちでも見られるようになりました。ネット配信万歳。関連する全方面にありがとうございます。れいうみの大人っぽさがこの作品と合っていて、しっとりと美しくて。うみちゃんカマラの放つ台詞が実に刺さる。「あなたではなく、あなたの軍服を見ていたのです」れいこさんラッチマンの台詞も鮮烈。この作品は予習せず、何も知らずに見た方がより印象深く残る気がする。結末もめでたしめでたしで終わらない、大人な作品でした。おだちんは研いくつだ?とつくづく思いました。

雪組fff:この作品が今年の公演だったことが信じられない……遠い昔のことのようです。だいきほを最後にこの目で耳で見られてよかった。この作品は感想を書き始めると長くなりそうなのでまずは簡潔に。後で余裕があったらもう少し書きたい。途中緊急事態宣言が出ていたこともあって、劇場に足を運ぶたびにもうこれが最後かもしれない、と毎回思っていました。ただ見るだけの私ですらこうだったのに、出演する側はどれだけの思いだったでしょうか。大千穐楽を迎えられて本当によかった。

謎の女(真彩)の歌声?声?音?はどこから降ってくるのでしょう。人間が出している声だけれど、人ならざる者の声だった。劇場で聞きながらこれは本当に目の前の人が出している声なのだろうかと耳を疑いました。正面から聞こえるというより天井から降ってくるような感覚でした。

ifを考えるのが良いことかわかりませんが、この作品で新人公演があったら誰が主役の座を射止めたのでしょうね。あったなら主役はあみちゃん(彩海せら)かな、と思いながら本公演を見ていました。青年ルートヴィヒはこの人が成長してだいもんルートヴィヒになったのだという説得力がありました。ヒロインは……真彩ちゃんについて学ぶことができる最後の機会でしたから、はおりん(羽織夕夏)かありすちゃん(有栖妃華)だったらよかったのにな(願望)。そして噂のかせきょーくんを認識した。楽団員の集団にいてもわかる。つええ。

ショーは大世界がもう一度見たい。中央では真彩ちゃんが歌姫従えて歌っているし、左右では男役群舞が格好良すぎてどれを見るか毎回悩んでいるうちに場面が終わってた。目が足りなかった。目が10個くらいに増えたら自力ですべて見られたかもしれないけどそんなことはできないので、全方位からのマルチアングル付き映像で見たい。

宙組夢千鳥:無観客故に、本来なら拍手が入る場面でも無言無音の配信を見るのは苦しかった。けれど配信であってもこの作品を見られてよかった。ソラカズキ夢二の退廃の美、じゅりちゃん他万喜が見せるぞっとするほどの美しさ。全員良かったけれど、主役とヒロインの2人が圧倒的で、台詞の応酬に愛憎入り混じった愛が際立って凄かった。演出の栗田先生はこれがバウ公演デビューでした。来年ずんちゃん(桜木みなと)の東上公演を担当されることが決まりましたのでこちらも楽しみ。

星組ロミジュリ:初めてロミジュリを見た。B日程の愛ちゃんの死がとんでもないオペラ泥棒でした。上手の端に居ても舞台奥の暗がりにいても全部愛ちゃんの死にロックオン。ダイ○ンなんか目じゃないくらいの吸引力。あれは劇場で見られなかったら相当後悔したと思うので見られてよかった。元々は別箱公演だったこともあってお役が少なく、活躍の場が限られることに勿体なさを感じるけれど、ストーリーとしては面白いので再演を望む声が多いのもわかる。この作品は普段お友達になってくれない友の会が珍しくお友達になってくれたので幸運にも大千穐楽を見ました。大千穐楽では、ロミオとジュリエットが死んで、最後のモンタギュー家とキャピュレット家が入り混じって並ぶ場面で、この作品で退団されたまめちゃん(桜庭舞)が美しい涙を流していたのが印象的でした。どうされているのかなあと思い検索したら、先日からインスタ始めてらした。幸せそうなまめちゃんが見られてよかった!

雪組ほんまほ:あーさ東上公演おめでとう!寓話的な要素のあるオリジナル作品ということでタカラヅカの王道とは少し違っており、ただ演じるだけでは魅力が伝わり切らず難しかったと思うのですが、この作品を魅力あるものとして輝かせ、演じ切ったあーさとひまりちゃんに拍手を。お衣装がすべて素敵で印象的でした(加藤真美先生が担当だったとのこと)。ブラウンベースのアダムとジェインが着ていた燕尾とドレスが特に素敵。タカラジェンヌはパーソナルカラーとか関係なくどんな色でも着こなしちゃいますけど、今回は特にあーさによく似合う色合いで構成された衣装が多かったように思います。ファンタジーは中々企画が通らず、キムシン先生が長年構想を温めてきた作品とのことでしたが、私はファンタジー大好き人間なのでおとぎ話のような作品が嫌いな訳がなかった。原作も読みましたが、アダムの立ち位置等々含めてキリスト教的だなあと思う。解釈を深めるためにキリスト教の基礎知識が欲しい。別箱公演はこれまで殆ど見たことがなかったので、人数が少ない分、下級生を見る楽しみもあって面白いなーと思った。

花組アウグストゥス:大劇場の千穐楽が無観客公演となったのがつらい。タカラジェンヌは誰も悪くない、ただただ感染症の流行状況とそれに対する措置に従ったまで。それでも満員の拍手に包まれて大劇場を旅立ってほしかったと思わずにはいられない。クールビーストで格好良いあきらが見られてよかった。お芝居はすみませんノットフォーミーでした……トップ娘役と二番手の退団公演だったのでもっと楽しいお話が見たかったよう。二人とも死んじゃうし。元老院議員の新公主演組なんて中盤で皆まとめて死!でどうすんのよ?!と内心思いました。その後は亡霊か怨霊的な存在になって出てきてたけど、あれだけのメンバーを活かしきれてなくて見ていてじれったかった。アントニウスは一兵卒からのし上がったというところに、紆余曲折ありつつも最終的に二番手スターになったあきらの経歴を重ねた宛て書きなのはわかりましたが、最後の公演で苦しんで死ぬ姿を見たいかといわれるとNOである。正直、異人たちのルネサンスぴんとこなかったので多分田淵先生の作品と相性が良くないのかもしれない。

ショーはポルノのジョバイロに乗せて輝くあきらが美しかった。最後まで美しい、観客の心を奪う花男でした。OGになってから少し髪が伸びて美しいお姉さまになったのも美しくて大好きーー。ああいうお顔に弱い自覚はある。同じくポルノグラフィティの狼に乗せたれいまいお肉対決も大好き、巨大骨付きお肉がよく似合うトップスターというのも稀有なのでは。れいちゃんがマイティーに見せるやんちゃなにやっとした笑みに、お互いの信頼が表れているように思えて目で追ってしまいます。そして美穂×音の美声デュエットは何度でも聞きたいです。ぜひまた別の公演でもデュエットしていただけないでしょうか。

星組マノン:愛ちゃん東上。クラシックな作品が似合うなあ、と。天飛レスコーは大きいお役ながら悪いチャラ男がそこにいて目を惹きました。歌が上手いと思うと夕陽真輝くんでした。

月組桜嵐記:珠城りょうという人は上田先生にとってのミューズでした。さくらちゃんの弁内侍が実に愛らしくて、無骨な珠城正行とお似合いのカップルでした。桜舞う中、正行の「美しい春よのう」に「はい……!」のひとことですべてを伝える弁内侍に胸がギュッとなる。男役が女性役を演じるのは宝塚ではままあることですが、この作品では娘役が男性の役を演じていた。ウエクミ先生なりの宝塚へのアンチテーゼなのだろうか。月組は上級生から下級生まで芝居上手が多すぎて目が足りません。組長・副組長の老年時代コンビ、紫門さんの高師直、華蘭さんのジンベエ、まゆぽん(輝月ゆうま)の楠木正成、るねぴ(夢奈瑠音)の北畠顕家、おはねちゃん(きよら羽龍)の少女時代の弁内侍……書ききれないですね。そしてさち花さん・はーちゃん・蘭世ちゃんの湯殿シーンは凄かった。人の世は苦界である。

花組銀ちゃん:マイティー東上おめでとう。電飾でギラギラピカピカのお衣装すら着こなしてみせる、それがタカラジェンヌ。飛龍くんは何演じても魅力的……。星空美咲ちゃんの舞台度胸よ!ぶっとんだ玉美の糸ちゃんと、ジミーの侑輝大弥君が気になる公演でした。

花組コルドバ:エル・アモールの柚香・星風・永久輝・音の4重奏(と呼んでいいのだろうか)が印象に残る。ショーはいなくなった人の分、下級生が繰り上がっていて、寂しくなると同時に新しい輝きを目にする喜びがある。

宙組ホムシュー:先に大まかな感想書いちゃった。ほんとチケットが取れない公演でした。デリシューをもう一度見たい。プロローグで大階段からぶわーっと降りてくるのは夢の始まりという感じで大好きです。潤花ちゃんのそこにいるだけでぱっと華やぐ笑顔は凄い。宙組で真風と組ませようと考えた劇団の判断もすごい。どの場面も素敵すぎて言葉にしてたら切りがない。音楽配信のプレビュー聞いたらクレープ伯爵の自己紹介が記憶している東宝公演と全然違うんだがどういうことだ。すんごく力強い自己紹介だね……?東宝はこんなゴリゴリじゃなかったはず。記憶違いだったらごめん。このショーは視覚的に楽しむ要素が多かったのでCDはなくてもいいかなあと思ってたけどCD欲しくなるなあ。

月組おだバウ(何と略すのか):芝居の人ここにあり。最後の山越えとかは若干脚本に怪しさを感じなくもないですが、おだちんの力でねじ伏せた感。おはねちゃんのホヨホトが美しかった。娘役の高音域はどこまでも高く……。

雪組シティーハンター:これも先ほど感想書いたので短めに……と思いつつ、これが一番通ったので記憶がよく残ってる。叶ゆうり氏の勇梨のハイヒールは何㎝だったのでしょう。目測で7㎝は余裕であったと思うのだけど、あれ履いておかみさん背負って細い銀橋を疾走できるってよっぽど体幹が強いのだろうなと。

Twitter等で事前に知っていたけれど、Firefiver!のパレードであーさが二番手の羽根背負って降りてきたのを見た瞬間がぐっときました。ドンジョバンニはムラ公演では演出が違ったようで、実際に目にしていないので詳細は避けますが、東宝公演では演出変更されていたので助かった(事前に聞いてたムラ公演バージョンのままだったら頭抱えながら見てたと思う)。若手ダンス選抜シーンは娘役だと希々良ちゃんがアピール上手で強かった。彼女はゆきちゃん(仙名彩世)みがあって気になります。はいちゃん(眞ノ宮るい)はどこにいても気になる。はいちゃんは色香がとんでもない(語彙力皆無)。男女カップルになっての群舞では上手端にいましたが、とんでもなくアダルトな雰囲気駄々洩れで目が離せなかった。そもそも男役群舞がとてもとても良い。大階段に並んで踊りながら、久城・諏訪で歌うのが最高。今年一番好きな男役群舞だった。

星組柳生:愛ちゃん退団。礼真琴氏はどうしてあんなに安定して低音が出るんでしょう。アルトというかもはやテノールの領域では?お芝居は天丸役の瑠璃花夏ちゃんの演技が良くて新公ヒロイン抜擢も納得でした。下級生で抜擢されるのはダンスが多く、お芝居で光る下級生というのはあまり多くないように思うので、今後どのように成長していかれるのか気になる。ショーは岡田先生のゆったりしたテンポを久しぶりに味わって楽しい。星組は超絶熱血体育会系で群舞でも銀橋でもどこでも上級生から下級生まで俺を見ろ!!!と言わんばかりにギラッギラしてる印象があるけれど、こういうクラシカルなショーも映えるギャップが面白いと思う。ショーは愛ちゃんが美しく格好良く、慈愛に満ちた微笑みを浮かべているように見えたのが印象的でした。

 

超駆け足だけれどギリギリ年内に感想まとめられたぞ。来年もよき宝塚観劇ができますように。皆様よいお年をお迎えください。